NIPT(新型出生前診断)とは?費用や検査時期・認可の違いをわかりやすく解説

NIPT(新型出生前診断)とは?費用や検査時期・認可の違いをわかりやすく解説

「赤ちゃんは元気に育っているかな?」「お腹の子に病気はないかな?」

妊娠中の喜びとともに、ふとそんな不安がよぎることは珍しいことではありません。医療技術の進歩により、ママの血液だけで赤ちゃんの染色体の状態を調べられる検査、それが「NIPT(新型出生前診断)」です。

これまでの検査とは違い、お腹に針を刺す必要がないため、流産のリスクがなく安全性が高い検査として注目されています。

この記事では、NIPTの仕組みから、検査でわかること、費用、そして受ける前に知っておくべきメリット・デメリットまでを分かりやすく解説します。

正しい知識を持って、安心して出産に臨むための判断材料にしてくださいね。

目次

NIPT(新型出生前診断)とは?仕組みと特徴

NIPTは「Non-Invasive Prenatal Testing」の略称で、日本語では「無侵襲的出生前遺伝学的検査」と呼ばれています。

簡単に言うと、妊婦さんの腕から採血した血液を使って、お腹の赤ちゃんに染色体の変化(病気)がある可能性を調べる検査のことです。

妊娠中、母体の血液には胎児(正確には胎盤)由来のDNAのかけらがわずかに混ざっています。このDNAの断片を最新の技術で解析することで、赤ちゃんの染色体疾患のリスクを判定します。

従来からある「羊水検査」などは確定的診断と呼ばれ、お腹に針を刺す必要がありました。しかし、NIPTは採血のみで行えるため、ママの体や赤ちゃんへの負担が極めて少ないのが最大の特徴です。

スクリーニング検査(可能性を調べる検査)という位置づけですが、従来の血液検査(母体血清マーカーなど)に比べて感度や特異度が高く、精度の高い検査結果が得られることで多くの妊婦さんに選ばれています。

従来の出生前診断との違いを比較

出生前診断にはいくつかの種類があります。NIPTがこれまでの検査とどう違うのか、主な特徴を表にまとめました。

NIPTは「非確定的検査」に分類されますが、同じ非確定的検査の中でも検査精度が非常に高いことが分かります。

検査の種類検査方法流産リスク精度(感度)検査時期
NIPT
(新型出生前診断)
母体採血なし高い
(99%以上※)
10週〜
母体血清マーカー
(クアトロテスト)
母体採血なし低い
(80%程度)
15週〜
コンバインド検査
(超音波+採血)
超音波+採血なし中程度
(83%程度)
11週〜
羊水検査
(確定的検査)
腹部に穿刺あり
(0.1〜0.3%)
100%
(確定診断)
15週〜

※21トリソミー(ダウン症候群)に関する感度。陰性的中率は99.99%以上と言われています。

検査で「わかること」と「わからないこと」

NIPTは万能な検査ではありません。検査の対象となる疾患は決まっており、赤ちゃんの全ての病気がわかるわけではない点を理解しておくことが大切です。

基本検査でわかる3つの染色体疾患

NIPTで主に調べられるのは、以下の3つの染色体の変化です。これらは染色体の数が通常より1本多い「トリソミー」と呼ばれる状態です。

  • 21トリソミー(ダウン症候群):
    染色体異常の中で最も頻度が高く、発達の遅れや心疾患などの合併症が見られることがあります。
  • 18トリソミー(エドワーズ症候群):
    成長の遅れや心臓などの内臓に形態異常が見られることが多く、重篤なケースも少なくありません。
  • 13トリソミー(パトウ症候群):
    脳や顔面、心臓などに重度の形態異常を合併することが多く、予後が厳しい疾患です。

一般的な認可施設(認証基幹施設・連携施設)で行われるNIPTは、基本的にこの3つの疾患の有無を調べます。

性別判定やその他の検査について

血液中のDNAを調べるため、技術的には赤ちゃんの性別や、上記3つ以外の染色体の変化(全染色体検査)、微細欠失症候群なども判定することが可能です。

しかし、日本医学会の指針に基づいた「認可施設」では、基本的に性別判定や3つのトリソミー以外の検査は行われません。これは、命の選別につながる懸念や、検査結果の解釈が難しく妊婦さんの混乱を招く可能性があるためです。

一方で、独自のプランを提供している「認可外(無認可)施設」では、性別のお知らせや幅広い範囲の検査を行っているクリニックも存在します。ご自身が何を知りたいのか、夫婦でよく話し合って施設を選ぶ必要があります。

NIPTを受けるメリットとデメリット

検査を受けるかどうか迷っている方のために、メリットとデメリットを整理しました。

メリット:母子への負担がなく早期に安心できる

最大のメリットは安全性です。採血だけで済むため、流産のリスクに怯えることなく検査を受けられます。

また、妊娠10週0日という妊娠初期の早い段階から受けられるのも大きな利点でしょう。陰性(リスクが低い)という結果が出れば、残りの妊娠期間を安心して過ごすことができます。もし陽性だった場合でも、早期に結果がわかることで、赤ちゃんを迎えるための環境を整えたり、心の準備をしたりする時間を十分に確保できます。

デメリット:費用が高額で確定診断ではない

NIPTは病気の治療ではなく検査であるため、健康保険が適用されず全額自己負担となります。費用については後述しますが、決して安い金額ではありません。

また、あくまで「非確定的検査」であることにも注意が必要です。NIPTで「陽性」が出たとしても、それは「病気の可能性が高い」という意味であり、100%確定ではありません。

本当に染色体異常があるかを確定させるには、羊水検査などの侵襲的検査(お腹に針を刺す検査)を受ける必要があります。特に若い妊婦さんの場合、NIPTで陽性と出ても、実際には赤ちゃんに異常がない(偽陽性)確率が、高齢妊娠の方に比べて高くなる傾向があります。

参考:出生前検査認証制度等運営委員会

受検可能な時期と費用の相場

具体的なスケジュールやお金の話も確認しておきましょう。

いつからいつまで?妊娠10週以降が目安

NIPTが受けられるのは、一般的に妊娠10週0日以降です。エコー検査で心拍が確認され、予定日が確定してからの受検となります。

検査を受けられる期間の上限(いつまで)は特に定められていないことが多いですが、万が一陽性だった場合に羊水検査へ進むスケジュールを考慮すると、妊娠15週〜16週頃までに受けることが推奨されています。

検査結果が出るまでには、採血から1〜2週間程度かかります。

検査費用は10万〜20万円が目安

自由診療のため、医療機関によって価格設定は異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。

  • 基本検査(3つのトリソミー):10万円〜15万円前後
  • 全染色体検査などオプション含む:15万円〜25万円前後

この他に、初診料や遺伝カウンセリング料が別途かかる場合があります。また、「陽性だった場合の羊水検査費用を負担してくれる」という保証サービスがついているクリニックもあります。

料金の安さだけで選ぶのではなく、アフターフォローが含まれているかどうかも確認ポイントの一つです。

「認可施設」と「認可外施設」の違いとは?

NIPTを調べていると必ず目にするのが「認可(認証)」と「無認可(認可外)」という言葉です。2022年から新制度が始まり、施設の区分が明確化されました。

日本医学会の認証施設(認可施設)

日本医学会や日本産科婦人科学会の指針に基づき、運営委員会から認証を受けた施設です。

産婦人科専門医と小児科専門医が常駐している(または連携している)、十分な遺伝カウンセリング体制が整っているなど、厳しい基準をクリアしています。

検査前の説明や検査後のフォローが手厚いのが特徴ですが、検査項目は基本的に「3つのトリソミー(13,18,21)」に限定され、性別の通知も行われません。かつては「35歳以上」などの年齢制限がありましたが、現在は年齢制限は撤廃されています。

独自のサービスを行う認可外施設

学会の認証を受けていない施設ですが、違法というわけではありません。美容外科や皮膚科などが窓口となっているケースも多く見られます。

特徴は、制限の少なさです。年齢制限や夫婦同伴の必須条件がなく、1回の来院で済む、性別判定や全染色体検査が可能など、妊婦さんのニーズに合わせた独自のプランを提供しています。

ただし、遺伝カウンセリングが不十分な場合や、陽性時のフォロー体制が施設によって大きく異なるため、慎重な施設選びが求められます。

まとめ

NIPTは、採血のみで赤ちゃんの染色体異常のリスクを高精度に調べられる画期的な検査です。

  • 検査時期:妊娠10週以降から可能
  • わかること:主に21、18、13トリソミーのリスク
  • メリット:流産リスクがなく、早期に安心材料が得られる
  • 注意点:確定診断ではないため、陽性の場合は羊水検査が必要

「検査を受けることが正解」というわけではありません。知ることで安心できる方もいれば、知ることで悩んでしまう方もいます。

大切なのは、ご夫婦で「もし結果が陽性だったらどうするか」を事前にしっかりと話し合っておくことです。その上で、自分たちに合った検査や医療機関を選んでください。

新しい命を迎える準備の一つとして、この記事が後悔のない選択の一助となれば幸いです。

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